白川紺子さんの
【下鴨アンティーク】を読みました。
京都を舞台に
いわくつきの着物をめぐるミステリー小説。
少し不思議な物語です。
ネタバレは、1話目をがっつり
他に、ちらほら
下鴨アンティーク
著者:白川紺子
集英社オレンジ文庫
全8巻・読む順番は?
【下鴨アンティーク】は全8巻。
副題は付けられていますが
通し番号は示されていないので
読む順番を間違えちゃいました。
正しい順番はこちら↓
1、アリスと紫式部
2、回転木馬とレモンパイ
3、祖母の恋文
4、神無月のマイ・フェア・レディ
5、雪花の約束
6、暁の恋
7、白鳥と紫式部
8、アリスの宝箱
最後の【アリスの宝箱】は番外編。
番外編に掲載されている6つの話は
主人公がいろいろなスピンオフ。
あらすじ
京都、下鴨_。
高校生の鹿乃は、旧華族である野々宮家の娘だ。
両親を早くに亡くし、兄の良鷹と、
准教授をしている下宿人の慧と三人で、
古びた洋館に住んでいる。
アンティーク着物を愛する鹿乃は、
休日はたいてい、祖母のおさがりの着物で過ごす。
そんなある日
「開けてはいけない」と言われていた蔵を開けてしまう!
すると次々に不思議なことが起こって…!?
©アリスと紫式部の裏表紙より
主な登場人物
野々宮鹿乃(ののみや・かの)
両親を早くに亡くし
祖母に育てられた高校生。
アンティーク着物が好きで
休日は着物で過ごしている。
野々宮良鷹
鹿乃の兄。30歳位?
「いいのは顔と頭だけ」と揶揄され
いつも広間のソファでぐーたらしている。
古物商を営んでいて、眼は確か。
八島慧
良鷹の(唯一の)友人。
近所の大学で近世文学を教える准教授。
大学生の頃から10年程
野々宮家に下宿している。
野々宮芙二子
鹿乃と良鷹の祖母。
いわくつきの着物を預かって
蔵に保管していた。
こんな話です(ネタバレ有)
不思議な着物
作中で起こる不思議なこと
一番最初のエピソードをざっくり書きますね。
**********
祖母・芙二子が亡くなってから1年。
蔵は開けるな、と言われていたけれど
祖母が残したものが傷まないよう
蔵から着物を出してきて虫干しを行うことに。
ところが不思議な出来事が。
干していた着物の柄が変わっている?
着物に描かれた2台の源氏車の
片方が壊れてしまっている。
壊れた源氏車を描くことなんて無いし
蔵から出した時には
普通の源氏車が描かれていたはず!
*源氏車:平安時代の牛車、御所車ともいう
着物を元に戻そう
無残な柄に変ってしまった着物を
このままにはしておけない!
でも、いったいどうすれば?
鹿乃は、祖母の残した目録を頼りに
着物の持ち主や周囲の人の話を聞いたり
着物の柄に関連する古典文学などから
【なぜ着物にこんなことに?】と探っていく。
どうやら
着物の持ち主の想いが強く残り
着物に変化をもたらすみたい。
どうやって元に戻すの?
着物を元に戻す方法。
鹿乃が手探りで辿り着いたのは
着物に合わせる帯や小物を工夫して
着用すること。
無事に着物の柄は元に戻った。
(´▽`) ホッ
元通りになった着物は
綺麗に畳んで、蔵で大事に保管。
あるべき処に納まるのは着物だけでなく
着物の持ち主や関係者の心も
ほんわか解される話も多く
読んでいるわたしもホッ。
帯や小物の工夫って?
最初のエピソードに登場した
源氏車柄の着物は
藤鼠色で綸子地に大柄な葵の葉の地紋。
そこに2台の源氏車が描かれている。
連想されるのは
源氏物語の中の【葵上】
六条御息所との確執が描かれた場面。
鹿乃は、着物の柄を戻すため
源氏車が2台ある話の解釈を
争いの場面ではなく、
楽しい場面に見立てることに。
着物に合わせた帯は琵琶の刺繍帯。
小物類は赤の帯締め、赤の扇を象った帯留め。
源氏車の色に因んで柳色の半襟と帯揚げ。
源氏物語に詳しい人なら
帯や小物でもピンとくるのかな?
*作中では詳しく説明されています。
着物の謎は一話完結
着物の謎については一話完結。
鹿乃の祖母の友人や、
その母親世代の着物が殆どなので
【身分違いの恋】で苦しんだ話が多い印象。
**********
着物の謎の他に
全8巻をゆったり流れるのは
鹿乃と慧の恋の話。
また、鹿乃の祖母の新婚時代や
ご先祖様の話も出てくるのが新鮮。
下鴨アンティークの感想
表紙が綺麗
下鴨アンティークを購入した時に
表紙が綺麗だな~と思いました。
イラストは【井上のきあ】さん。
千代紙?
いえアンティーク着物かな♪
これは塗り絵にしたら楽しそう
って思っていましたら
最終巻が発売された2018年に
表紙イラストの線画をダウンロード出来る
キャンペーンをしていたんですって。
(既に終了)
もし、その時に知っていれば
ダウンロードしたのになぁ。
残念(´・ω・`)
京都は不思議が似合う
下鴨アンティークの舞台は京都。
わたしの勝手なイメージですが
なんというか京都って
不思議なことが似合う土地だな~って思います。
ずーっと昔から受け継がれる
伝統や人々の想いなどが
京都の土や木々、建物に
深ーく浸み込んでいて
それがたまに
フワッと浮かび上がるような
独特の雰囲気があります。
実際に京都で暮らしている人からしたら
「妙なこと言わないで」って思うかもしれませんね。
ごめんなさい。
作中に登場する
四季折々の景色の描写が素敵で
【京都行きたいな~】って思いました。
芙二子さん可愛い
1巻【星月夜】
3巻【祖母の恋文】などに
鹿乃の祖母・芙二子の若い頃の話があります。
この若い頃の芙二子さんが
めっちゃ可愛くて
終始ニヤニヤしながら読みました。
いわゆる【ツンデレ?】
普通の高校生には難しい謎
作品中に出てくる謎は
普通の高校生が解くには
とても難しいものだと思いますが
鹿乃は着物が好き。
兄・良鷹は古物商。
下宿人・慧は近世文学准教授。
兄と慧がいれば知識は十分です。
作者もお話を書くの大変そう。
巻末に掲載されている参考文献は
源氏物語の他にも歴史書や
シェイクスピアのソネット集
ハイネの詩集など幅広いです。
切なくてもどかしい
鹿乃と慧の恋心は、切なくてもどかしいです。
ずっと家族のように暮らしてきたし
ふたりとも自分の恋心に疎い。
更に慧は、自分が鹿乃のことを
好きだと気付いた時には
即、気持ちを封印する方向へ。
自分が鹿乃を好き
=【鹿乃が傷付く】と考えてしまいます。
鹿乃からの告白を無下に断り
他の理由もあって、
長年下宿していた野々宮家を出ます。
鹿乃は鹿乃で
【慧ちゃんに迷惑かけたくない】と
自分の気持ちを閉じ込めちゃう。
お互い、相手のことを一番に考えて
身を引いてしまう2人。
切なくてもどかしい(´;ω;`)
まあでも大丈夫。
2人の周囲にはおせっかいが揃ってます。
着物生活って素敵
鹿乃は休日の殆どを
着物で過ごしています。
近所の買い物や、お散歩も着物。
素敵だな~。
鹿乃が、高校のお友達と一緒に
着物で雛祭りを楽しんでいる場面があって
それも素敵♪と思いました。
作中にも素敵な着物がたくさん。
【星の花をあなたに】で登場した
桔梗の着物にとても惹かれました。
着物生活、素敵なんだけど
着付けとか、着物の管理を考えると
面倒ですよね。きっと。
更にわたし粗忽者なので
着物を汚す危険大です。
ガラガラ洗濯できたらいいのに。
(´・ω・`)
おわりに
のんびり癒し系の鹿乃のせいか
ほんわか気分になれるミステリーです。
あとライトノベルだから?
文字が大きくて読みやすかったです。
白川紺子さんの文、好きだな。
最近執筆していらっしゃる
【後宮の烏】シリーズも
まとめて購入しようと思います。
それではまた(^▽^)/
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